ワット・パークナムとワット・クンチャンの2つの寺院を参拝したあと、フアランポーン駅へやって来ました。
タイ国鉄の普通列車に乗って、パヤタイ駅まで移動します。

フアランポーン駅は、かつてバンコクの玄関口として北のチェンマイや東北のノンカイ、南のハジャイなど、タイ各地へ向かう長距離列車やマレーシア・バタワースへ向かう国際列車も発着し、多くの旅人で賑わっていた歴史あるターミナル駅です。
しかし現在、その役割は近代的な「クルンテープ・アピワット中央駅」へ引き継がれています。
今では近郊普通列車が発着する静かな駅となりましたが、高いドーム型の天井やクラシカルな駅舎は今も変わらず残されており、往時の面影を感じることができます。

そんな歴史ある駅で、17時40分発の普通列車に乗るため切符売り場へ向かいました。
窓口で「パヤタイ(Phaya Thai)」と伝え、100バーツ札を差し出すと、係員の女性は首を横に振り、一言。
「ソン(2)バーツ」
「えっ、2バーツ?」
慌てて100バーツ札をしまい、財布の底から1バーツ硬貨を2枚探して手渡します。すると、小さな紙の切符がすぐに発券されました。
手元の切符を見ると、運賃は本当に「2バーツ(約10円)」。
現在、バンコク市内を走るエアコンなしの赤バスでも最低運賃は8バーツほどです。それを考えると、このタイ国鉄の安さは驚くばかり。
バンコクが急速に発展を続けるなか、この路線だけは昔のまま時間が止まっているように感じられました。

ホームに向かうと、乗車する列車がすでにホームへ入線していました。
先頭にはディーゼル機関車、その後ろには年季の入った客車が6両連なっています。
ちょうど夕方の帰宅ラッシュの時間帯だったこともあり、車内は地元の人たちで賑わっていました。

空いている席を探しながら前方へ進んでいくと、一番前の車両で4人掛けのボックス席が丸ごと空いているのを発見。
青いビニールレザーのシートに腰を下ろすと、ほどなくして列車がゆっくりと動き始めました。

運賃2バーツ、パヤタイ駅まで約13分の小さな鉄道旅の始まりです。
フアランポーン駅を発車した列車は、あまり速度を上げることなく街の中をゆっくり進んでいきます。
エアコンのない3等客車ですが、全開になった窓から吹き込む夕方の風が心地よく、昔ながらの列車旅らしい雰囲気を味わえます。

窓の外へ目を向けると、日本では考えられない光景が広がっていました。
線路脇どころか、砂利の上に椅子やテーブルを並べ、人々が思い思いにくつろいでいるのです。
列車がすぐ横を通過しても誰ひとり慌てる様子はなく、それがごく当たり前の日常であることが伝わってきました。

発車から約8分で途中駅のウルポン駅に到着。
ホームだけでなく反対側の線路上にも乗客が待っており、列車が停車すると慣れた様子で両側から次々と乗り込んできます。
安全対策が徹底された日本の鉄道に慣れていると、この光景には思わず驚かされます。
そういえば、2022年に乗車したメークローン線でも、市場のすぐ横を列車が通り抜ける光景に衝撃を受けました。
今日見た線路脇の暮らしや線路上から乗り込む人々の姿も、それと同じです。
私には驚きの光景でも、ここで暮らす人たちにとっては昔から続く、ごく普通の日常なのでしょう。


ウルポン駅を出発して約5分。
列車は再び速度を落とし、目的地のパヤタイ駅へ到着しました。
ホームへ降り立つと、そこは夕方のラッシュアワー。
私と入れ替わるように多くの乗客が乗り込み、列車はディーゼルエンジンの音を響かせながら、次の駅へ向けて走り去っていきました。

わずか13分、運賃2バーツの小さな鉄道旅。
短い乗車時間でしたが、観光地ではなかなか出会えないバンコクの人々の日常に触れることができました。
パヤタイ駅で下車した後は、一度「マーブンクローンセンター(MBK)」へ立ち寄り、荷物預かり所に預けていた荷物を受け取ってからスワンナプーム国際空港へ向かいました。
約13時間という乗り継ぎ時間でしたが、「ワット・パークナム」と「ワット・クンチャン」の2つの寺院を巡り、タイ国鉄で13分間のローカル列車にも乗車するなど、限られた時間で充実したバンコク観光を楽しむことができました。
幻想的なエメラルドの仏塔と天井画が美しいワット・パークナム、そして偶然見つけて立ち寄った個性あふれるワット・クンチャン。同じエリアにありながら、それぞれ異なる魅力を持つ2つの寺院を巡れたことは、その奥深い魅力を改めて実感した、思い出に残る13時間の乗り継ぎ観光でした。
何度訪れても新しい発見があるバンコク。
その奥深い魅力を改めて実感した、思い出に残る13時間の乗り継ぎ観光でした。
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